P
lease smile for me.











私が笑えばあなたも笑う。それだけで良かったのに。



ずっと、一人だった。
両親は幼い頃に死んだ、と言っても私の記憶には無いのだけれど。
物心が付く前って言ってもそんなに小さかったわけではない。
なのに、思い出そうとすればするほど私の記憶から2人は消えていった。
別に構わない。覚えてない人を思い出しても意味は無い。
今、此処に生きている。それだけで良かった。
両親が死んだ後のことは明確に覚えている。
私は拾われた。孤児院や教会なんかじゃない。
私のたった一人の兄上に。

『血の繋がらない』兄上。

年は20ほど離れていた。
兄上は街の若い輩を集めてグループを作っていた。
やることと言ったら俗に言う『悪いコト』。
そう兄上は私に教えてくれた。そして『悪いコト』も。
盗み。脅し。騙し。私は日々成長していった。
そして。


初めて、あなたに出会った。


そこら辺の男どもとは違った。
品のある、柔らかい人。というのが第一印象。
だって、私の周りの男どもと言えば私と同じ兄上に拾われた奴ばかりで。
金と女に狂ってたり、アルコールに溺れてたり、薬に依存してたり。
ロクな奴がいなかった。だから、品のある男の人といえば兄上ぐらいなモノだった。
けれど、私の観念は見事に崩された。
こんな人間がいると、思わなかったのだ。
家柄は貴族だと言うし上品には上品なんだが、それとはまた違った。
それはきっと暖かい笑顔のせい。

何度か2人で落ち合った。彼の親は私の事を嫌っていた。
だから満月の夜にだけ、会おうと約束した。
ある日兄上に呼び出され、こう言われた。
『私は明日から隣国へ行く。
私が帰ってくるまでその男を騙して、取れるだけ取ってごらん?そうしたら、お前を自由にしてあげようか』
別に自由を望んでいたわけじゃない。今の生活も気に入っていた。
けれど、口実にしたかった。今更普通の女の子に戻れるわけがない。
だからそれを口実にして、彼に近付きたかった。

『紗羅、僕やっぱり父上と母上に話してみる』
『何を?』
『紗羅と僕の事。いつまでも、このままじゃいけないと思うんだ』
『でも・・・悠に迷惑がかかる・・・』
『紗羅はこのままでも良い?』
『良くないけど・・・』
『大丈夫。きっと僕が説得させるから』
『・・・うん』

タイムリミットだった。
彼が説得させてしまえば別れを告げなければならない。
説得できなかったとしてもそろそろサヨナラを言わなければならない。
もうすぐ兄上が帰ってくる。そうしたら、このゲームは終わりだ。

すぐに満月の夜は来た。
今日は兄上の命で数名の男どもも来ると言う。
小高い丘の上、私はいつものように彼を真待つ。男どもと会話をしながら。

もしも、話をしていなかったら。いつもの様にあなたは笑ったのかしら。

『あの男、親を納得させようとしてるんだって?』
『えぇ、どっちにしろ反対されるのに。馬鹿よね』
『はっ。もしも説得させたら?』
『え?』
『今日、結婚を申し込まれたら、って話しだよ』
体が強張り唇が震えた。
『・・・そ、そんなの、笑ってごまかすに決まってるじゃない、アイツ、私の笑顔に弱いのよ』
必死につむいだ言葉は虚言。けれど私の口から零れたという事は、事実。

どうすれば良かったのだろうか。これで正しかったのだろうか。

私の言葉に狂った彼は辺りに真っ赤な血を撒き散らした。
一人、また一人と男どもが屍になり私の周りを埋め尽くす。
銀の線が私の喉へと導かれるかのように突きつけられた。
彼は、私を殺してくれるのか。
殺す価値も無い私を、殺してくれると言うのか。

私は最後に彼に出来ることは、笑顔。

『悠、ありがとう』
『紗羅ぁっ!!』

刃を喉に突き刺した瞬間兄上の言葉が脳裏に過ぎった。
『お前を自由にしてあげようか』


私はもう、自由だ。





あなたは本当に私の笑顔を受け止めていてくれたのだろうか。

これが偽りの笑顔だと、気付かなかったのだろうか。

いや、偽りだと、自分に偽っていたのかもしれない。

ねぇ、最期の事が私の真実。それに偽りなど無いから。

だから、もう一度、私に好きとは言ってくれないかな。

どこで会えるかは、分からないけれど。


















言い訳
この前書いた続きです・・・続き?いや、紗羅ヴァージョン。
なんか折角書いたので差し上げます。
前と文章の書き方が変わっちゃってて申し訳ないです。
この前のを書き上げたとき紗羅ヴァージョンを書かねば
紗羅が悪者っぽい・・!?と思い書きました。
気に入ってくだされば幸いです。

Restricted Love 礎 稀華
05.03.21





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