Chain Of  Word


空を愛でし日の懐かしき。
過去を思いし日の遠きし。
言の葉は、いつの日も強き鎖とて、縛りし。


「父さん、どこ行くの?」
「病院だよ」
「ふーん。ねぇ、あそこにある建物何?」
「あれはね。・・・病院だよ。これから、行くところだ」
「こんなところに病院?だってこんな何もないところに・・・」
「・・・何もないところだからこそあるんだよ」
「へぇ・・・」


僕は父親に連れられて病院に向かっていた。
父の友人が入院しているのだと聞いていた。
この日。僕は君に出会って、君と短い時間を過ごした。




「おはよう。緋那ちゃん。今日も外見て、何かあるの?」
「・・・・」
「・・・」
「如月さん、気にすることないよ。緋那ちゃんは昔からあんな感じで話してるとこなんて
一度も見たことないし。ここは精神病院なんだから」
「はい・・・わかってます」



「ついたよ。櫂。降りて」
「・・・・本当に何もないとこだな・・・父さんの友達のお見舞いだろ?なんで俺まで」

「そんなこと言うなよ」
「はいはい・・・」
「父さんの友達って誰?」
「ん?あー。まぁ・・・」
「なんだよ。ってかここ何の病院?」
「・・・精神科」
「・・・・へぇ」
「暇だったらどっかその辺で遊んでてもいいよ。父さんだけでも行ってこれるから」
「そ。じゃぁどっかその辺にいるわ」
「・・・・・・・・」


病院に入りがけだった僕が外にでようとしたときに。
一人の女の子を見た。
腕は細くて、車椅子に座って、じっと外を見つめてた。
その近くで、看護婦が話しているのが少し聞こえていた。


「緋那ちゃんは何を見てるんでしょう?」
「・・・また緋那ちゃん?いいの。私たちの仕事はそんなんじゃないんだから」
「でも・・・」
きっと。
彼女にも聞こえているんだ。
表情一つ変えないけど、聞こえていないわけがなかった。

ただの病人。
だけど。どうしてか目が止まった。


「・・・ねぇ。君、名前は?」

さっきの会話で名前はもう知っていたけど、
話しかける口実がなかった。
「・・・」
「無視かよ・・・」
「・・・」
「どこ見てんの?外?」
「・・・」
「外行きたいの?」
「・・・」
「いつからこんな病院にいるの?」
「・・・・」
「ねぇーーーー」
「・・・・」

振り返りもしなかった。
強い意志と強い眼差しが、すごく綺麗に見えた。
「あんた、しゃべれないのか?」
「・・・」
「・・・少しくらいこっち見てくれてもいいじゃん・・・」
その一言に反応したのかどうかはわからないけど、
ずっと振り返ることのなかった彼女が僕の方を見た。
まっすぐな目で。
まっすぐ見ていた。
「あ・・のさ・・・しゃべれないの?」
「・・・」
「うなずくとか。首振るとか・・・できるっしょ?」
「・・・」

死んだように動かないのに。
綺麗に光った目をしていた。

「緋那。っていうんだろ?」
「・・・知ってるんじゃない・・・」

か細い声でそう言った。

「なんだよ。しゃべれんじゃん」
「・・・話せないなんて・・・一言も言ってない」
「・・・だってずっと無視しちゃってさ」
「・・・それが?」
「聞こえてないのかと思った」
「・・じゃぁ聞こえない・・・」
「なんだそれ・・・」
「言葉」
「・・・・そりゃわかる」
「・・・」
「なんで、しゃべらないの?」
「・・・誰と」
「誰とでもだよ。さっき看護婦が悩んでんの聞こえただろ?」
「・・・そんなの・・・話したくないからでしょ」
「でも、今は話してるじゃん」
「・・・・話さなくていいなら話さない」
「なんだそれ・・・いや。話してていいんだけどさ」
「・・・・あなた誰」
「俺?あ。俺。櫂」
「・・・そ」
「そっけないな。緋那はどこが悪いの?」
「どこも」
「は?」
「悪いとこなんて・・・ない」
「じゃぁなんで病院に?しかも車椅子って・・・歩けないの?」
「・・・体が動かないから」
「あるじゃん・・・悪いとこ」
「・・・ここに来てからだけど」
「え?」
「ここに来てから、何も食べなくなった。動かなくなった。話す人もいない」
「・・・」
「もう何年も。私が生きてること自体罪なんじゃない?」
「そんなわけ・・・」
「櫂には・・・関係ない」



凄く。淋しそうで。
凄く。辛そうで。
よく覚えてる。
それでも。強く。強く。耐える姿が。
凄く。惹かれた。

「・・・さよなら」
「緋那・・・」


最期に凄く綺麗な悲しそうな笑顔を見せて。
細い腕で車椅子を動かして行ってしまった。
それが。
本当に最初で最期の出会いだった。
その後も。
その精神病院には何度も来たけど。
もう二度と会うこともなかった。


僕は。
彼女が亡くなったことを知った。
たった一日。
会って話して。
それだけ。それだけ。

他人なのに。
なんでか。すごく大きなものを失ったような気がした。
最期の言葉と最期の笑顔は。
今も僕を縛り付けている。



花を愛でし美しき。
過去を思いし悲しき。
言の葉はいつの日も、縛りし、鎖とて。
忘れることなき。
遠ときを。


僕は。
それから。よく君を夢に見る














BLUE PLANETの桜華サマから小説を頂いちゃいましたー・・。
嬉しいよー(泣)素敵過ぎるー・・。
前文と最後のトコロがカッコ良いです〜vV
私にはこんなカッコ良いお話は書けません。
なんで緋那は病院に居るのか、とかいっぱい気になりますけど、
そのミステリアス加減(何)が素敵です!!!
本当にありがとうございました!!





ウインドウを閉じてお戻りください。
















SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送