一瞬緩んだ空気がどこかへ消えてしまうのではないかと思うほど冷たい瞳が彼に宿った。
彼は笑いを止め呼吸を整え話し始めた。
「僕の事かー・・懐かしすぎて思い出すのも面倒だった」
「・・良いの?」
「良いさ、全も話してくれたことだから。けれど、これから僕は僕ではなくなる」
瞬間、密は密ではなくなった。
あの笑顔はどこかへと消え、柔らかい瞳には鋭さが灯り。
密は消えてしまった。目の前にいる人間は誰?
声を掛けようか迷い、口を開けば彼が先に言葉を紡いだ。
「僕は正直言って裕福な家庭だ。父は貿易商、母は女優だった」
「密・・・?」
「兄もいた。一人大学に行って・・・・その内、死んだ」
「・・・何故」
「僕も原因は知らないんだ。ただ、死んだ、って知らせが家に届いただけ」
密ではない密が語りだした話は決して良い思い出ではないはずなのに、密が少し笑ってるように見えた。
Can I become fortunate in the following tale?
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